江川楽器製作所　トロンボーンについて

創業と技術の背景

江川楽器製作所は明治25年頃、江川仙太郎氏が宮本喇叭製作所から独立して創業しました。当初は信号ラッパや銀製のフラジオレットの製造と修理から始まり、明治30年代にはピストン付き管楽器の試作に着手。1902年には「株式会社江川楽器製作所」となり、大正から昭和初期にかけて発展しました。

トロンボーンの特徴

このトロンボーンは大正5年〜9年頃に製造されたもので、ベルにはヤマハの音叉マークが刻印されています。これは江川楽器製作所が日本管楽器製造所（のちに日本管楽器株式会社）になる直前に作られたもので、共益商社を通じて流通した可能性があります。ヤマハの印とは別に、F. ベッソン社の様式を模したデザインが影響していると考えられています。

歴史的価値

同様の形状を持つトロンボーンは、大正12年頃の写真にも確認されており、当時の音楽隊や軍楽隊で使用されていた可能性が高いです。こうした背景から、このモデルは楽器史料としても貴重な存在です。

まとめとして

江川楽器製作所のトロンボーンは、創業初期からの技術の蓄積と市場流通の歴史を象徴する楽器です。特にヤマハとの関係性や国産への移行期をリアルに映す存在として、コレクターや研究者からも注目されています。